寒冷地でエアコン暖房は可能なのか

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今年もまた冬がやってきました。

私が住んでいるのは積雪寒冷地。
冬の暖房費は半端じゃありません。。
だからと言って、使わないわけにもいきませんが、何とか出来ないかと、今年からエアコン暖房を使ってみることにしました。

積雪寒冷地に人にとっては、「エアコン暖房?いやいや、無理でしょ。」って感覚だと思います。
しかし最近では、「寒冷地向け暖房エアコン」なんてのも積極的に売り出されるようになりました。

果たして、積雪寒冷地でエアコン暖房は成り立つのでしょうか?

寒冷地向けエアコン

エアコン業界にとって、積雪寒冷地は未開のフロンティア。
夏はエアコンがなくてもなんとかなるうえ、冬はエアコンじゃ暖房として役に立たない。
ということで、エアコン普及率はかなり低いようです。
だって、エアコンつけてもその他に灯油ストーブとかが必要になるなら、無理して買いませんよね。
しかし、かといって他の地域はすでにエアコン完備が当たり前。
市場としては拡大する見込みもなかったのでしょう。

そこで開発に乗り出したのがのが、寒冷地向けエアコンらしいです。
通常のエアコンは、室外機に霜がつくと霜取り運転状態となり、その間は暖かい空気を送り出すことができません。
寒冷地向けエアコンはそこを改善し、外気温が-20℃くらいでもいきなり暖かい空気を送風できるうえ、霜がついていても除去しながら暖かい空気を送風できるように作られています。
私が検討したときは、パナソニックの「フル暖」、三菱の「ズバ暖」、日立の「白くまくん」、ダイキンの「スゴ暖」、東芝の「あったか大清快」など、各メーカーがこぞって開発されている感じがしました。

どのメーカーがいいのか

ではどのメーカーがいいのか。
パナソニックの「フル暖」は、北海道陸別町で実証中であることを強く売り出しています。
三菱の「ズバ暖」は、広告にかなり力を入れていますね。
自分で色々と調べると、他所で冬にエアコン暖房を使っているところはないか、気になってきます。
そうして周りを見渡して見ると、私の地域で実際に一番目に付いたのは三菱の「ズバ暖」な気がします。

私が各メーカーを調べた限りでは、省エネという視点ではパナソニックが有利だと思いました。
各社の一番小さいタイプ(冷房8畳用)で比較すると、年間消費電力は
パナソニック「フル暖」717kwh(0円)
三菱「ズバ暖」748kwh(775円)
日立「白くまくん」788kwh(1775円)
ダイキン「スゴ暖」790kwh(1825円)
東芝「あったか大清快」850kwh(3325円)
ですかね。
()内の数字は、パナソニックを基準とし、1kwh当たりの単価を適当に25円とした場合の、年間電気代の差額です。
この数字は、自動車でいえばカタログ上の燃費くらい理想的な数字だと思うので、実際の電気代はこれ以上すると思います。

機能的な差は、各メーカーを見る限りではほとんどないと思います。
外気温-20℃で動いて、除霜中でも暖気を送風できて、人を感知して最適な送風の仕方をして、スマホで遠隔操作できる。
この辺はどのメーカーでも同じっぽいです。
あとは、音声警告してくれたり、自動オフしてくれたり、エアコンの消費電力がわかったり、という細かい機能で差別化を図られているようです。

そんなにいいなら、もっと普及してるはずじゃない?

とは言うものの、私の周りでエアコン暖房をメインとしている人はいません。
まだまだ、エアコン暖房に対する認知度は低いと思いますし、話をしても誰も食いついてきません。

家電量販店の店員さんにも聞いてみました。
その時は夏だったのですが、
「最近、寒冷地向けエアコンって開発されてきてますよね。店内には寒冷地向けエアコンのラインナップがあまりないように見えるのですが、売れてないんですか?」
「いやー、まったく売れないですね。」
「店内には展示品として種類を増やさないんですか?」
「いやー、なんだかんだいって、冬にエアコンで暖房は無理ですよ。」
「・・・( ゚Д゚)」
エアコン売場の店員さんですら、このレベルです。
まして一般の人なんて、ほぼほぼ見向きもしないわな、と思いました。

エアコン暖房のメリット

そもそも、エアコンで暖房するメリットはなんでしょうか。
これは単純に経済的である、ということと、安全であることだと私は思います。
経済的にはランニングコスト・イニシャルコスト両方の面でメリットがあります。

ランニングコスト

近年発達したヒートポンプ技術により、エアコンのエネルギー効率は上昇しています。
COP5の条件下では、使用した電気エネルギーの5倍の熱量が得られる計算なのですから、これはかなり経済的と言えますね。
例えば、灯油と比較してみますと、1000kcalの熱量を得るのに必要な灯油量は、0.114㍑、電気量は1.16kwh。しかし、cop5のヒートポンプを利用すると、その5分の1のkwhで同じ熱量を得られるので、0.233kwh。
灯油単価を94円/㍑、電気量単価29円/kwhとすると、1000kcalを得るのに必要なお金は、灯油10.7円、電気6.76円となります。
おお、暖房費が3分の2くらいになり、お得ですね。
灯油と電気単価は、実際の我が家の先月ベースの単価です。
この差は、当然ながら灯油と電気の時価によって増減します。
今は灯油が安く、電気代が高いときですから、昨年などはもっと電気が有利だったのかなと。

オール電化にすることによるランニングコスト減少

今はオール電化に逆風でしょうが、機器全てが寿命を迎えたとき、単に機器ごとのランニングコストの差を考えるだけでは不十分です。
なぜなら、電気契約には、オール電化にすることによるインセンティブがあるからです。
このとき、暖房器具として電気製品を選ばなければなりませんが、いずれにしてもヒートポンプ式のエアコン又は温水暖房システムを選ぶことになるでしょう。
「灯油ストーブ」か「エアコン暖房」かを考えるだけでなく、「電気・灯油・ガス併用」のままか「オール電化」にしてしまうか、そこまで収支計算したほうがお得になる人もいると思います。
ちなみに、我が家は、灯油ストーブ、ガスレンジ、給湯器を買い換えて3年だったため、全ての機器を買い換えてのオール電化は10年では元を取れないと判断しましたが、それらが買い替え時期であればオール電化にしたほうがプラスでした。
そして、そのときにはリビングに寒冷地向けエアコンを設置するプランでした。

イニシャルコスト

エアコン暖房は、イニシャルコストの面でも有利になる場合があります。
なぜなら、冷房器具と暖房器具が同じだからです。
10年に1度買い替えるとして、エアコン+ストーブを買うより、エアコンだけ買って、それで冷房と暖房の両方を賄えれば、当然その方が安いですよね。
ただし、寒冷地向けエアコンは、一般的なエアコンより高いので、もともと冷房用にエアコンを必要としない人は、エアコンのイニシャルコストが灯油ストーブより高くつく場合があります。

室内機の省スペース

灯油ストーブは600mm×800mm程度のスペースを床に確保しなければなりませんし、子どもがいる世帯ではストーブガードをつけることにより、さらに室内が圧迫されることになります。
一方で、エアコンの室内機は、基本的に天井付近に取り付けられるため、暖房器具のスペースを確保する必要がありません。
エアコンの真下にテレビを置くことだってできますね。

安全

ストーブガードの話を重複しますが、エアコンは暖かい空気を送り出すだけですので、暖房器具特有の心配はありません。
ガスストーブや灯油ストーブ、パネルヒーターのセントラルヒーティングは、たとえガードをつけたとしても、子どもが間違って火傷をしたらどうしよう、という不安は拭えません。
また、今時はあまり心配することはないでしょうが、不完全燃焼による一酸化炭素中毒もありません。何も燃焼させてないので当然ですね。
以上の点から、安全面ではダントツでしょう。

エアコン暖房のデメリット

一方、エアコン暖房にはデメリットも存在します。

空気が乾燥しやすい

1つ目は空気が乾燥しやすい、ということです。
実は灯油ストーブは、灯油を燃焼させる際に水蒸気を同時に放出していますが、エアコンは屋内の空気と屋外の空気で熱交換をしているだけ、つまり室温だけが上がっていきます。
この時、室内の空気中に含まれる水蒸気量は変わりませんが、室温上昇に伴って飽和水蒸気量だけが上がっていってしまい、結果として湿度が下がってしまいます。
参考までに、単に「湿度」というと「相対湿度」をいい、「相対湿度=(空気中の水蒸気量)/(飽和水蒸気量)」となります。
このため、エアコンは「灯油ストーブに比べて乾燥しやすい」のです。
しかし、実はこの点は灯油やガスのセントラルヒーティングでも同じです。
理由はエアコンとまったく同じ、というか、燃料をそこで燃焼させて暖めるタイプ以外の暖房器具は、理屈上では同じはずです。
ただし、例えば床暖は足元から暖めて体感温度を上げますしハロゲンヒーターなどは対象を輻射熱で直接暖めるため、体感温度の割りに室温を低く抑えることが可能です。
そこまで考えると、やはりエアコン暖房は一番乾燥する器具だといえそうです。

乾燥に伴うコスト増大

乾燥することに伴って、加湿器を併用する人が多いと思います。
その場合、加湿器本体のイニシャルコスト4000円程度、1円/時間で18時間運転するとして、540円/月のランニングコストを見込むことになります。

室外機の設置スペース

室内機の省スペースとは対照的に、室外機はそれなりのスペースをとります。
灯油ストーブやガスストーブ、セントラルヒーティング用ボイラーなどはせいぜい排気筒がちょっと出てるくらいですからね・・・。
さらに、室外機は空気を取り入れる必要がありますので、空気の流入が良いところでなければなりませんし、積雪寒冷地となれば、冬に雪が積もった状況も考慮する必要があります。
その結果、室外機の設置方法として、架台を高くして据え置きにしようか、いや壁付けがいいか、配管を延長して玄関前に設置するか、防雪フードをつけるべきか、高いからネットや木で自作するか・・・など、色々と考えることが出てきます。
まぁ、私はそういうのが楽しいタイプなのでまだいいですが、面倒くさがりな人には難しいところがあるかもしれません。

故障までの期待値

ここは完全な主観的考えです。
灯油ストーブやガスストーブ、灯油ボイラーやガスボイラーは、機器としては昔からある単純な構造だと思います。
素人考えではありますが、単純な構造のものというのは壊れにくいと思っています。
普通に使っていれば10年はもってくれると思います。
その一方、エアコンの故障報告というのは、調べて見るとかなりあるようです。
一般的な耐用年数は両方とも10年程度ですが、エアコンの故障報告は5年程度のものが多いように感じました。
つまり、耐用年数までもたずに故障するケースの多い暖房器具だと思います。
もし新しく買うなら、必ず10年保証を私はつけます。

結論

エアコン暖房は、「これからの暖房器具はこれ一択!」とまでは言えませんが、検討すべき暖房器具としてはアリだと思います。
私は次の買い替えのときは寒冷地向けエアコンで暖房する予定です。
というのも、デメリットは加湿器を使ったり保証をつけたりすればほぼ全てクリアできるのに対し、メリットはお金では買えない安全面と、我が家の10年間の試算としては30万円以上プラスになると見込んでいるので。
ただし、ストーブ買い替え時期でなければエアコン自体のイニシャルコストでプラス分が吹き飛ぶため、今は買い替えをしません。
代わりに、試験的に寒冷地向けエアコンではない、通常のエアコンで暖房を試みています。
これについては、また別の記事でその成果をあげていくことにします。

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